佐保山荘にて〜カウンセリングの宿題〜

7歳の時、佐保山荘という母子寮にて。

私はその日、病気でもないのに学校を休んでしまった。

そんな事では世間体が悪いと言われ、アロハシャツのような薄汚れたパジャマのまま真冬の門前に連れ出され、職員の若いお姉さんと掃除をする事になった。

そこへ、近所のおばさんが自転車に乗って通りかかり、職員のお姉さんと話し始めた。2人は笑いあっていたけど、話の内容を理解出来ない私は一層居心地が悪く、モゾモゾしながらホウキをもって突っ立っていた。

しばらくして2人の会話が止まった時、自転車に乗ったおばさんが私を見た。さっきまでの笑顔はなく、とても恐ろしく思える表情で、「施設の子?」とお姉さんに尋ねた。

「ううん、お母さんと暮らしてる子なんやけど、今日は学校を休んだからお手伝いしてくれてるんですよ」お姉さんは、笑顔のままで優しく答えていた。

「ふうん」と、おばさんの表情は変わる事なく、そのうちに自転車に乗って行ってしまった。

「寒いやろ?なぁ?あのクソババアが」まだお姉さんは笑顔だった。7歳の私にも、お姉さんが私を慰めてくれてる事は十分、理解出来た。

それと、あの時、人が人を憎しむ時どんな表情を出すのか知ったような気がした。

泣きはしなかったけど、その日はしばらく胸の支えが収まらなかった。

あのおばさんの顔は、たぶん一生忘れなれないと思う。